浮気の証拠・書類

「浮気調査費用」を相手に請求できる?不倫相手への請求方法と実例を解説

浮気の証拠・書類

「夫(妻)の浮気が許せない。探偵に頼んで証拠を押さえたけど、この費用、相手に全額負担してほしい!」
パートナーの裏切りがなければ支払う必要のなかったお金ですから、そうお考えになるのは当然のことです。胸が張り裂けるような思いをされたことでしょう。

ただ、残念ながら、調査にかかったお金を必ずしも、全額浮気相手に請求することができるとは限りません。とても悔しいことですが、現実として知っておく必要があります。

ここでは、探偵や興信所などにかかった浮気調査費用を浮気相手に負担してもらうことについて、丁寧に解説します。

浮気調査の費用を相手に負担してもらうためのポイント

調査にかかったお金は、どんな場合でも相手に支払いを求められるわけではありません。ここでは、そのための条件について一緒に見ていきましょう。

そもそも、浮気の調査費用を浮気相手に請求できる?

まず、あなたが浮気相手に対して、法律的にどのようなことを浮気相手に請求できるのかを確認しておきましょう。

根拠となるのは民法709条という法律で、簡単に言うと「誰かに損害を与えたら、その埋め合わせをしなければならない」ということが記されています。

パートナーとの浮気(不貞行為)は、この「他人の権利や利益を侵害する行為(不法行為)」にあたります。そのため、あなたは浮気相手に対して損害の埋め合わせ(損害賠償)を求めることができるのです。

ただし、浮気が原因で生じた損害なら何でもかんでも賠償が認められるわけではありません。浮気と「直接的なつながりがある」と判断される損害だけが対象となります。

浮気によって受けた心の傷に対する「慰謝料」は、この直接的なつながりが認められやすい代表的なものです。
一方で、浮気を知ってショックで病院に通うことになった場合の治療費や、探偵などに依頼した浮気調査費用については、常に直接的なつながりが認められるとは限らないのが現状です。

では、どのような場合に浮気調査費用が賠償の対象として考慮されるのか、具体的に見ていきましょう。

その調査、本当に「必要」だったと判断される?

まず大切なのは、「浮気の証拠をつかむために、調査会社に依頼することが本当に必要だったのか?」という点です。

例えば、

  • パートナーやその浮気相手が、すでに浮気の事実を認めている
  • 二人の性的な関係を示す写真や動画など、決定的な証拠がすでにある

といった状況であれば、それ以上の調査を行う必要性は低いと判断される可能性が高いです。

逆に、

  • 浮気の疑いはあるけれど、確たる証拠も相手の情報も何もない
  • 浮気があったことは分かるけれど、相手が誰なのか特定できていない

このような場合には、真実を明らかにするために調査を行う必要性が認められやすいでしょう。

浮気調査にかかった費用は「妥当な金額」と見なされる?

調査の必要性が認められたとしても、支払った浮気調査費用の全額が賠償として認められるとは限りません。ここが、多くの方が疑問に思われる点かもしれません。

調査会社への依頼には、100万円や200万円といった高額な費用がかかることも珍しくありません。しかし、裁判になった場合、浮気調査費用として賠償が認められるのは、多くの場合10万円から30万円程度にとどまるのが実情です。

はっきりとした理由は示されていませんが、背景には「浮気調査の基本は尾行などであり、やろうと思えば自分自身でもできること。専門家に依頼することが必須ではない」という考え方があるのかもしれません。

少し似た話として、裁判で弁護士に依頼した際の費用(弁護士費用)の賠償があります。
裁判で勝訴した場合、相手に弁護士費用の一部を請求できますが、実際に支払った全額が認められることはほとんどありません。一般的には、認められた慰謝料の1割程度(例えば、慰謝料100万円なら弁護士費用は10万円)が賠償額として認められることが多いです。
これも、「裁判は本人だけでも行うことができるため、弁護士への依頼は必須ではない」という考え方が根底にあるようです。

実際の裁判ではどう判断された?浮気調査費用のケーススタディ

先ほど、裁判所は調査費用について、あまり高額な賠償を認めない傾向にあるとお伝えしました。ここでは、実際の裁判でどのような判断が下されたのか、具体的な事例をいくつかご紹介します。

ケース1:約78万円の調査費用のうち10万円が認められた事例

この事例では、パートナーの携帯電話の情報から浮気の事実は確認できていたものの、相手が誰なのか特定できなかったため、調査会社に依頼する必要性が認められました。
しかし、すでに浮気の証拠自体はあったことから、支払った浮気調査費用78万6397円のうち、浮気との直接的なつながり(相当因果関係)が認められたのは10万円のみという判断でした。

ケース2:約27万円の調査費用全額が認められた事例

こちらは、浮気を疑って調査会社に依頼し、その結果として不貞行為の事実を知るに至ったという経緯から、調査の必要性が認められました。
さらに、調査が1日で完了しており、その費用も不相当に高額とは言えないと判断され、かかった費用27万1101円の全額について、浮気との直接的なつながり(相当因果関係)が認められました。

ケース3:約46万円の調査費用のうち10万円が認められた事例

このケースでは、パートナーや浮気相手が素直に事実を認めるか疑わしかったため、調査会社に依頼したこと自体は、浮気の有無を確認するためにやむを得ない面があったと判断され、調査の必要性は認められました。
しかし、裁判所が浮気との直接的なつながり(相当因果関係)を認めたのは、支払った浮気調査費用46万4458円のうち10万円のみでした。

諦めないで!話し合いで浮気調査費用を全額回収できたケースも

ここまで見てきたように、裁判になると調査費用は一部しか賠償が認められないことがほとんどです。がっかりされたかもしれません。

しかし、諦めるのはまだ早いかもしれません。裁判になる前の「話し合い(交渉)」の段階であれば、状況は変わる可能性があります。
話し合いでは、相手が納得して合意さえすれば、調査にかかった費用の全額、あるいはそれに近い金額を支払ってもらうことも不可能ではありません。

相手が早期解決を望むような事情(例えば、職場に知られたくない、家族に知られたくないなど)があれば、交渉次第で調査費用についても有利な条件を引き出せる可能性があります。

まとめ

探偵や興信所に支払った調査費用を、浮気相手に請求できるかについて解説してきました。

話し合いで相手が支払いに応じてくれれば良いのですが、そうでなく裁判になった場合、司法の判断としては調査費用全額の回収は難しいことが多い、というのが現実です。

だからこそ、調査を依頼する前の段階で、「この問題解決のために、調査にどれくらいの費用をかけるのが適切か」をご自身の中でしっかり決めておくことが、後悔しないためにとても重要になります。