浮気・不倫の法律

家庭内別居中の浮気は慰謝料請求できる?できない?よくあるケースやポイントを解説

浮気・不倫の法律

配偶者が浮気や不倫をしてしまった場合には、通常、精神的苦痛に対する慰謝料を請求できます。では、同居は続けているものの実質的には離婚寸前のような状態、いわゆる「家庭内別居」のときに相手が不倫した場合でも、同様に慰謝料を請求できるのでしょうか。

実は、夫婦なのに日常会話がほとんどなく、食事や金銭管理が完全に分かれているなど、他人のような暮らし方をしているご家庭は少なくありません。

ここでは、「家庭内別居中に起きた不貞行為」と「慰謝料」の関係について、ポイントを押さえながら解説していきます。

家庭内別居とは?

家庭内別居とは、婚姻関係が事実上壊れているにもかかわらず、物理的には同じ住居で生活を続けている状態を指します。明確な定義があるわけではなく、「挨拶程度しか会話がない」「食事をそれぞれで取り、寝室も別々」「家計すら分離している」など、夫婦間のコミュニケーションや生活スタイルが断絶していることが特徴的です。

定年後に週末婚のような形で別々の暮らしを送る夫婦もいますが、家庭内別居はお互いに修復の意思がないまま同居している場合が多い点で異なるといえます。一般的には、家庭内別居と判断できる状況に陥っている夫婦は、婚姻関係が破綻しているとみなされるケースが少なくありません。

離婚事由と婚姻関係破綻の違い

離婚原因として認められる「婚姻関係の破綻」とは、法的な解釈が異なる面があります。

民法770条が定める「婚姻を継続しがたい重大な事由」の例としては、長期の別居、虐待・暴力、浪費、犯罪、宗教活動によるトラブル、親族との不仲、性格の不一致などが代表的です。

家庭内別居は「長期間の別居」ではないため、主に性格の不一致などの理由で婚姻関係破綻が認められることになりますが、数年単位で家庭内別居の状態が継続していれば、実質的には長期別居と同等と判断されることもあり得ます。ここでは、民法770条で求められる離婚要件を確認しておきましょう。

離婚請求に必要な条件(民法770条)
・配偶者の不貞行為
・悪意の遺棄
・3年以上、相手の生死が不明
・回復の見込みがない重度の精神病
・上記以外で、夫婦生活の継続ができない重大な事由がある

「生活費をまったく入れてもらえない」などの理由で、生活基盤が脅かされている場合は悪意の遺棄に該当する可能性があります。ただし、家庭内別居の場合は一応同居しているため、その事実だけで悪意の遺棄を立証するのは難しいのが実情です。

また、DVやモラハラなどが原因で離婚請求を考える場合は、具体的な事情によって認められるかどうかが変わります。離婚や慰謝料請求の判断基準が分かりづらいときは、離婚問題に詳しい弁護士に相談してみてください。

離婚原因で最も多いのが「配偶者の浮気」

離婚の原因として最も多いのが「配偶者の浮気」です。法律用語では『不貞行為』と扱われ、配偶者の貞操義務違反を指します。たとえば、肉体関係を伴う浮気や不倫がこれに該当します。民法770条でも、不貞行為が離婚事由の一つとして挙げられています。

特に重要なのは、「不倫や浮気が夫婦関係のどのタイミングで起こり、どういった理由で始まったか」という点です。もし夫婦関係が既に破綻してから浮気をしたのであれば、原則として慰謝料請求は認められません。

一方、浮気によって夫婦仲が壊れて家庭内別居に至った場合は、不倫をした側とその相手に対して、離婚や慰謝料を求めることが可能になります。

夫婦の一方が離婚訴訟を起こせるのは、次の事情がある場合に限られます。

民法770条(裁判上の離婚)
一 配偶者に不貞な行為があったとき
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき
三 配偶者の生死が三年以上不明であるとき
四 配偶者が治癒の見込みのない重度の精神病にかかったとき
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

ただし、裁判所はこれらに該当していても、その他の事情を総合的に考慮して離婚を認めない場合もあります。

不貞行為が原因となって離婚や慰謝料を請求するケースは多いですが、争点になりやすいのは不倫・浮気の時期と、その行為が夫婦関係をどのように変化させたかという部分です。

家庭内別居中の不倫は基本的に慰謝料請求が難しい

家庭内別居の状態で相手が浮気や不倫をしても、通常はこちらから慰謝料を請求するのは容易ではありません。同様に、相手側からも請求されにくいと考えられます。

その背景としては、家庭内別居の時点で夫婦関係が既に破綻していると判断されてしまうことが多いからです。

破綻が認められるのはどんな場合?

では、具体的に夫婦のどんな状態が「破綻」とみなされるのでしょうか。参考として、チェックシート方式でまとめてみました。

<夫婦関係が破綻しているかを見極めるチェックリスト>
・モラハラやDV被害を受けている
・長期間の別居、もしくは家庭内別居が続いている
・夫婦で修復の努力をまったくしていない
・性の不一致が深刻
・お互いの不満が大きすぎて、修復が不可能な状態

1つでも当てはまれば、夫婦関係が破綻していると見なされる可能性が高いです。モラハラやDVがある場合でも、必ずしも破綻原因として直ちに離婚が認められるわけではありませんが、場合によっては高額の慰謝料が認められることもあります。

また、家庭内別居の期間が数年にわたると、長期間の別居と同じように扱われるケースもあるので注意が必要です。

家庭内別居中に浮気されたときに慰謝料を取る方法はある?

配偶者が不倫や浮気をしていたとしても、既に破綻状態とみなされる家庭内別居の最中では、慰謝料請求を成立させるのは容易ではありません。なぜなら、「夫婦がまだ破綻していなかった」という事実を客観的に示す証拠が必要になるからです。

もし実際には夫婦の絆が残っていたと証明できる状況での不倫ならば、慰謝料を求めることは可能です。ただし、多くの場合は「そもそももう破綻していた」と主張されるため、相手の浮気を理由に請求を通すことはハードルが高くなります。

実際には、同居を続けている場合でも裁判所が「修復不能」と見なすほどの破綻と認めることは少なく、浮気された側が主張を貫くのは難しいのが現状です。したがって、浮気相手への慰謝料請求を検討しているなら、早めに弁護士へ相談し、有利な証拠をどう集めるかアドバイスを受けるのが得策です。

家庭内別居中に不倫したのは自分…もし請求されたら?

これまでは配偶者の浮気を想定してきましたが、あなた自身が不倫した側で、家庭内別居中のトラブルに発展した場合はどうなるでしょうか。ここからは、自分が不貞を行った視点で、離婚問題の解決策を見ていきます。

不倫が事実で、配偶者と離婚したい場合

もしあなたが不倫をし、さらに配偶者との離婚を望んでいるなら、「家庭内別居中であっても、事実上夫婦が破綻していた」ことを立証する必要があります。ただし、同じ家で生活を続けていた場合は証拠を集めにくいため、いわゆる別居状態よりも破綻を認めてもらうハードルは高めです。

裁判所に破綻を認めてもらうために大切なポイント

夫婦関係が実際に修復不可能だったことを証明するため、以下のような点をはっきりさせることが必要です。

<婚姻関係破綻を示すチェックポイント>
・寝室を分け始めた時期
・生活費や家計を別々に管理していたか
・日常的な食事を一緒にとっていなかったか
・夫婦で外出する機会がどの程度あったか
・家庭内別居がいつ頃から始まり、どのように進行したか

これらを整理し、夫婦がもう元に戻れないほど関係が悪化していたと示せれば、同居中でも破綻を認めてもらえる可能性があります。しかし、実際には立証は難しく、専門的な知識が欠かせません。離婚裁判を想定するなら、離婚問題を扱う弁護士に協力を仰ぐのが近道です。

家庭内別居中の不倫と離婚に関するQ&A

ここでは、家庭内別居下での浮気や離婚に関して、よく寄せられる疑問を整理しました。特別な事例や複雑な事情をお持ちの場合は、やはり弁護士への相談がおすすめです。

 Q. 不倫があった時点では夫婦関係が既に破綻していましたが、相手から慰謝料を要求される?

A. 夫婦仲が実際に破綻していれば、本来は慰謝料は認められないとされています。

ただし、家庭内別居の証明は難しく、トラブルの状況次第では請求されるケースもあります。また、不貞行為が夫婦関係を決定的に壊したとみなされると、有責配偶者は自分から離婚請求ができなくなる点にも注意が必要です。

この考え方は「CLEAN HANDS(クリーンハンズ)の原則」と呼ばれ、法を守らない側の訴えは排除されるという考え方です。

 CLEAN HANDSの原則とは?
法律に反する行為を行った者は、自ら法的救済を求めることが難しくなります。不倫をした当事者は有責配偶者となり、保護されにくい立場になるということです。
民法708条(不法原因給付)
違法な目的で財産などを渡した場合は、その返還を請求できないと規定しています。ただし、不法原因が相手方のみにある場合は別という例外があります。

Q. 夫が不倫していたのに、「家庭内別居だったから破綻していた」と嘘をつかれました。慰謝料を請求できる?

A. 本当は家庭内別居の実態がないのに、夫が「すでに夫婦としては終わっていた」と言い逃れをするケースはあります。

その場合、実際には破綻していなかったことを立証し、不倫の事実を認めさせられれば、慰謝料請求が可能です。

単に寝室を分けていただけや、口論が多かっただけでは破綻と見なされるわけではありません。また、不倫相手に対して「夫婦関係はもう終わっている」と偽った結果、その相手にも慰謝料を請求できる場合があります。

Q. 「家庭内別居」を理由に、慰謝料の額を減らすことはできますか?

A. 夫婦関係が壊れていたと客観的に認定されれば、不倫や浮気があっても慰謝料が発生しないこともあります。

逆に、不倫そのものは認めるとしても、すでに関係が破綻していた点が考慮され、慰謝料が減額される可能性もあるでしょう。

いずれにしても、慰謝料の交渉では別居期間や夫婦間の経緯など複数の要素が考慮されます。自分にとって有利な材料を整理するためにも、離婚問題を多く扱っている法律事務所に相談するのがおすすめです。

Q. 配偶者が家庭内別居中に浮気した場合、不倫相手にも慰謝料を請求できますか?

A. 夫婦関係が破綻していなかったと証明できれば、不倫相手にも責任を問うことができます。

しかし、一方ですでに破綻状態と見なされれば、原則として請求は通りにくいのが現状です。

民法では夫婦の協力義務や扶助義務が定められており、同居していても実質的な協力や扶助がない状態が長く続けば、破綻とみなされる可能性が高まるためです。

民法第752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居のうえで互いに協力し合う義務を負います。ただし、屋根の下で生活していても各自が別々の部屋で過ごし、家計も別々となれば、協力義務が果たされていないとみなされます。こうした状態が長引くと、「実質的に婚姻関係は崩壊している」と判断されるケースが多くなります。

Q. 現在、浮気はまだバレていません。家庭内別居を理由に離婚だけ先に進めることはできますか?

A. 家庭内別居の実態だけを根拠に、一方的に離婚を進めるのは難しいです。

法律上、離婚には互いの合意が必要であり、一方が強く希望しても相手が拒否すれば、調停や裁判で争う流れになります。

たとえ破綻が明らかでも、手続きには相応の時間と手間がかかるため、相手の合意を得るか、法的手段をとるかの選択が不可欠です。