「不倫は犯罪と同じくらい許せない!」SNSなどで、そんな心の叫びを目にすることがあります。
大切なパートナーや婚約者に裏切られたと知ったら、本当にショックで、心が深く傷つきますよね。その苦しみを思うと、「何か法的な形で償ってほしい」「罰を与えたい」と感じるのは、自然なことかもしれません。
ですが、現在の日本の法律では、残念ながら不倫そのものが「犯罪」として扱われることはなく、懲役や罰金といった刑事罰の対象にはなりません。
ただ、がっかりしないでください。犯罪にはならなくても、民事上の「不法行為」というものにあたる可能性があり、それによって受けた精神的な苦痛に対して、慰謝料というかたちで償いを求めることができる場合があります。
この記事では、なぜ不倫が犯罪にならないのか、どのような場合に不法行為となり慰謝料を請求できるのか、といった点について、あなたの疑問や不安に寄り添いながら、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。
もし今、パートナーの不倫に悩んでいたり、疑いを感じていたり、あるいはご友人がそのような状況で心を痛めているようでしたら、どうかこの記事を参考にしてみてください。
不倫は犯罪にはならない
昔は違った?「姦通罪」という過去の法律
現代の日本では、不倫が犯罪として罰せられることはありません。でも、実は昔は違いました。江戸時代から昭和のはじめ頃までは「姦通(かんつう)罪」という罪が存在したのです。有名な詩人の北原白秋も、明治時代にこの姦通罪で訴えられたことがある、という記録も残っています。
「姦通」とは、今でいう「不貞行為」、つまり結婚している人が配偶者以外の人と性的な関係を持つことを指しました。
この姦通罪、江戸時代には関係を持った男女ともに死罪という、非常に重い罰が科されることもあったようです。さらに驚くことに、当時は自分の妻と関係を持った相手を夫が殺害しても、罪に問われなかったという話も伝わっています。それだけ、夫婦間の貞操を守ることが強く求められていた時代だったのですね。
しかし、この姦通罪は、第二次世界大戦後の昭和22年に行われた刑法の改正によって廃止されました。
世界に目を向けると、不倫が罪になる国も
先ほどお伝えしたように、今の日本では不倫は犯罪ではありません。ですが、世界に目を向けると、現代でも不倫(姦通)を犯罪として扱っている国や地域は存在します(例:ナイジェリア、フィリピンなど)。
特に一部のイスラム教国では、姦通は非常に重い罪とされ、場合によっては死刑が科されることもあるとされています。
ただし、不倫を罪とする国は多くありません
とはいえ、現在でも姦通罪を法律として維持している国は、世界的に見ると少数派です。例えば、お隣の台湾でも、2020年に姦通罪が廃止されました。
さて、ここからは話を現在の日本に戻して、不倫・不倫が「不法行為」にあたるケースや、慰謝料の請求について詳しく見ていきましょう。
婚姻関係にある場合の不倫は「不法行為」になりえます
日本では、結婚している人が配偶者以外の人と性的な関係を持つこと(いわゆる不倫)は、「不法行為」にあたる可能性があります。
「犯罪ではないのに、不法行為にはなるの?」と、少し不思議に思われるかもしれませんね。これは、法律の世界では、「刑事罰」の対象となるかどうか(犯罪かどうか)と、「民事上の責任」を負うかどうか(損害賠償など)は、別の問題として考えられているためです。刑事罰の対象にならない行為でも、他の人の権利を侵害したとして、民事上の責任(この場合は不法行為に基づく損害賠償責任)が発生することは、実はよくあることなのです。
「犯罪」と「不法行為」、どう違うの?
ここで、「犯罪」と「不法行為」の違いをもう少し分かりやすくご説明しますね。
- 犯罪:法律で「してはいけない」と決められていて、それを破ると国によって懲役や罰金などの刑罰が科される行為のことです。
- 不法行為:わざと(故意)またはうっかり(過失)によって、他の人の権利や法律で守られている利益を、ルールに反して傷つけてしまう行為のことです。
不倫(不貞行為)については、前にお話しした通り、現在の日本の法律にはこれを直接罰する規定がないため、「犯罪」ではありません。
しかし、結婚している夫婦には、お互いに貞操を守り、円満で穏やかな結婚生活を送る権利(法律上保護される利益)があります。配偶者の不倫は、この大切な権利や利益を侵害する行為と考えられるため、「不法行為」となり得るのです。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
簡単に言うと、民法709条は「他人の権利などを侵害したら損害を賠償しなければならない」と定めており、710条は「その損害には、精神的な苦痛(慰謝料)も含まれる」と定めている、ということです。
なぜ配偶者の不倫は「不法行為」になるの?
結婚した夫婦には、「穏やかな共同生活を平和に維持していく」という、法律によって守られるべき大切な利益があります。
配偶者が不倫(不貞行為(※))をすると、この「穏やかな共同生活を平和に維持していく」という大切な利益を壊してしまうことになります。だからこそ、結婚している人の不倫は「不法行為」にあたると考えられているのです。
結婚していないカップルの場合はどうなるの?
では、まだ結婚していない、お付き合いしているだけのカップルの場合はどうでしょうか?
不倫が不法行為とされる主な理由は、それが「夫婦の穏やかな共同生活」という法律で守られた関係を壊すからです。そのため、法的な婚姻関係にない、単にお付き合いしているだけのカップルの場合、一方の不倫があったとしても、それを直ちに「不法行為」と評価するのは難しいことが多いでしょう。
ただし、正式に籍は入れていなくても、事実上の夫婦として生活している(内縁関係と認められる)ような場合には、不倫が不法行為にあたる可能性もあります。
もし配偶者に不倫されたら…慰謝料について知っておきましょう
もし、あなたの配偶者が不倫をし、それが法律上の「不法行為」にあたる場合、あなたは不倫をした配偶者、そして多くの場合、その不倫相手に対しても、精神的な苦痛に対する償いとして慰謝料を請求することができます。
慰謝料はいくらくらい?目安となる金額
過去の裁判例などを見ると、不倫が原因で慰謝料を請求する場合、認められる金額の目安としては、数十万円から、場合によっては300万円程度になることが多いようです。
ただし、これはあくまで一般的な目安であり、はっきりとした基準があるわけではありません。慰謝料の金額は、
- 不倫が続いていた期間
- 不倫の回数や内容
- 不倫が原因で離婚に至ったかどうか
- 夫婦にもともと問題はなかったか
- 不倫をした側の反省の度合い
- あなたの精神的な苦痛の大きさ
- 不倫をした配偶者の収入や社会的地位
など、本当に様々な事情を考慮して、ケースごとに決められます。
慰謝料を請求するためのステップ
配偶者の不倫が分かり、慰謝料を請求しようと考えた場合、一般的には次のような流れで進めることになります。
まずは証拠をしっかりと集める
不倫の事実を客観的に示す証拠を集めることが、慰謝料請求の第一歩であり、最も重要です。もし相手が不倫を認めない場合、証拠がなければ、話し合いはもちろん、調停や裁判になったときに、不倫があったという事実を認めてもらうことが難しくなってしまいます。メールやSNSでの親密なやり取り、通話履歴なども手がかりにはなりますが、それだけでは性的な関係があったことまで証明するのは難しい場合があります。
離婚するかどうかを決める
慰謝料を請求すると同時に、配偶者と今後どうしたいのか、離婚するのか、それとも関係修復を目指すのかを決める必要があります。離婚するかどうかによって、慰謝料の金額や請求の方法が変わってくることもあります。
専門家(弁護士)に相談する
集めた証拠をもとに、慰謝料請求が可能かどうか、請求できるとしたらどれくらいの金額が見込めるのか、どのような方法で請求するのが良いのかなど、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。一人で悩まず、専門家の意見を聞くことで、冷静な判断ができ、今後の見通しを立てやすくなります。
請求方法を決めて実行する
弁護士と相談の上、請求方法を決めます。主な方法としては、次のような方法があります。
- 話し合い(協議):まずは相手方(配偶者や不倫相手)と直接話し合って解決を目指します。合意できれば、合意書(示談書)を作成します。
- 調停:家庭裁判所で、調停委員という中立な第三者を交えて話し合い、解決を目指す手続きです。
- 裁判(訴訟):話し合いや調停で解決しない場合に、裁判所に訴えを起こし、法的な判断を求める手続きです。
不倫による慰謝料請求の例
ここでは、実際に弁護士が介入して慰謝料請求を行った事例をいくつかご紹介します。
不倫による慰謝料請求の例①:3年間にわたる不倫のケース
浮不倫をしたのはクリニックを経営する男性でした。この男性は、家族ぐるみで付き合いのあった家事代行サービスの女性と、約3年間もの間、不倫を続けていました。その間、ホテルなどで数十回にわたり性的な関係を持っていたとされています。
最終的に、裁判所は男性に対して、慰謝料200万円と弁護士費用20万円、合計220万円の支払いを命じる判決を下しました。
不倫による慰謝料請求の例②:離婚後、不倫相手に慰謝料を請求したケース
不倫をしたのは会社員の男性でした。男性は会社の同僚である女性と、ホテルや女性の自宅などで密会を重ね、不貞行為を行っていました。
この不倫が原因で男性と離婚した元妻は、受けた精神的な苦痛に対する償いとして、不倫相手の女性に対して慰謝料を請求しました。女性側は当初、不倫の事実を否定しましたが、最終的には不倫の事実が裁判所に認められ、裁判所は女性に対して120万円の慰謝料の支払いを命じました。
ケース3:離婚はせず、不倫相手に慰謝料を請求したケース
結婚16年目になる40代の女性の夫に不貞行為が発覚。離婚までは考えていませんでしたが、不倫相手の女性に連絡を取ったところ、全く反省している様子が見られなかったため、弁護士に相談することを決意しました。
不倫相手の住所は遠方でしたが、弁護士は直接相手のもとへ出向いて交渉するなど、粘り強く対応しました。
その結果、裁判を起こすことなく、相手の女性から慰謝料440万円を受け取り、さらに「今後、夫とは一切接触しない」という約束(接触禁止条項)を取り付ける内容で合意することができました。
一人で抱え込まず、まずは相談を
この記事でお伝えしてきたように、パートナーの不倫(不倫)は、現在の日本の法律では「犯罪」として扱われることはありません。世界的に見ても、不倫を犯罪と定めている国は少数派となっています。
しかし、犯罪ではないからといって、決して許される行為ではありません。日本では、結婚している夫婦間での不倫(不貞行為)は、民法上の「不法行為」にあたる可能性があり、それによって傷つけられた心の平穏に対する償いとして、慰謝料を請求できる場合があります。夫婦には、お互いに貞操を守り、穏やかな結婚生活を送る権利があるからです。
もしあなたが今、パートナーの不倫に気づき、深い悲しみや怒り、不安の中にいるのであれば、どうか一人で抱え込まないでください。
まずは、落ち着いて状況を整理し、できる範囲で構いませんので、不倫の証拠を集めることから始めてみましょう。証拠集めが難しいと感じる場合や、集めた証拠が有効かどうか判断に迷う場合は、探偵や弁護士といった専門家に相談することも考えてみてください。
特に弁護士は、あなたの状況を法的な観点から分析し、慰謝料請求の可能性や進め方について具体的なアドバイスをしてくれます。つらい気持ちに寄り添いながら、あなたの権利を守るために力を貸してくれるはずです。
この記事が、少しでもあなたの心の助けとなり、次の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。